未来のスタッフへの手紙

カズキ

2013年04月16日 12:00

◆人生は一度きりです。

今からする話は、私の実体験を基に、
あなたに生きることの楽しさを伝えたいと思い、この手紙にしました。

決して難しい話ではありませんので、少しだけ素直に聞いてください。

なぜ福島県出身の私が、縁もゆかりもない長野県で、
蕎麦屋を開業できたのか、興味はありませんか?

それは、私がある時期から大切にしていたことが、
今の自分を作ってくれたのだと信じています。

21歳のとき、私は故郷福島県の蕎麦屋で修業を始めました。

そして2年が経過した頃、信州そばで名高い長野県に、
友人とそばの食べ歩き旅行に出掛けたのです。

長野県はとても良いところでした。

アルプスの山々がそびえ立つ雄大な大自然と、
福島県に似た食文化、さらには歴史的建造物の素晴らしさです。 

私はすぐに長野県を惚れてしまいました。

「ここに住みたい!」

この強い想いこそが、移住するきっかけとなりました。

そして、たまたま入った焼き鳥屋さんで、
運命の出会いが待ち受けていました。

カウンターしかない小さなお店です。
私は友人と旅の思い出を語りました。

その様子に興味を示してくれた大将は、私たちに声をかけてくれます。

「君たちはどこから来たんだい?」

と・・・。

私は自己紹介もかねて、長野への熱い想いを語り出しました。

「自分は、福島でそば打ちの修業をしているものです。今回、長野に信州そばを食べに来て、とても感動しました!このそばの本場である信州で、そば打ちの修業をしてみたいのですが、どこかお店はありませんかね?チャレンジしてみたいんです!」

と伝えました。

その様子に、大将はとても気にいって下さいました。

「面白い兄ちゃんだな!よし!とりあえず連絡先だけでも交換するか!」

となり、お互いに名刺交換をさせて頂きました。



福島県に戻った私は、ずっと長野県に想いを募らせていました。

そしてじっとしていられず、あの焼き鳥屋の大将に、
お礼状を書き、自分で打ったそばを贈ったのです。

あなただったら、どうしたでしょうか?

その後、すぐに大将から連絡を頂きました。

「なかなかいいそばを打つじゃないか。実は、私の知り合いに、蕎麦屋を経営している社長がいる。話を聞いたら、職人を一人募集しているそうだ。話だけでも聞いてみないか?」
 
私は、正直に言うと、驚きを隠せませんでした。
今度は、一人で長野県に向かい、蕎麦屋の社長とお逢いしたのです。

「君が塙くんか。ちょうどお店のリニューアルを考えていて、若い力が欲しかったんだよ。本気で来る気はあるのかい?」

と、社長の想いをお聞きしました。

そしてここが決断の時でした。
とてつもない不安やプレッシャーに襲われたのを、今でも覚えています。

それらを払いのけ、私は長野県に移住することを決断したのです。

こんなことが起きるとは、あなたも驚いたのではないのでしょうか?
この時から、私は出逢いの素晴らしさを実感しました。


ここから第二のそば道の始まりです。

私は誰も知らない土地に住み、毎日が孤独でした。

だから、初めて会う一人ひとりが、とてもありがたく、
その出逢いに感謝をしていったのです。

それを繰り返していくにつれて、徐々に仲間が増え、
小さな和は大きな和に変わり始めました。

そんな中、友人の一人がある女性を紹介してくれました。
それが現在の私の妻というわけです。

今では、三人の子供に恵まれ、充実した日々を送っています。

まさか自分が、何も知らない土地で、多くの仲間に恵まれ、
結婚をし、家庭を持てるとは、夢にも思っていませんでした。

これもすべて人のご縁です。感謝してもしきれないでいます。


そして今、あなたは私のお店のスタッフになってくれました。
人が一生に出逢う人数は、とても限られています。

こうしてあなたに出逢えたことも、
奇跡といっても過言ではありません。

本当にありがとう!

私のお店作りのテーマは「人と人を繋ぐそば屋」です。

お客様はもちろん、スタッフ同士が心から通じ合える、
「チーム」を作りたいと考えています。

私はあなたと一緒に、その素晴らしい「チーム」を作って行きたいのです。

長文を読んでくれてありがとう。

最後に私があなたに伝えたいのは、
人と人の繋がりの大切さです。

人はどこでどう繋がるか分かりません。
大事なのは、一期一会の心だと信じています。

その一瞬の出逢いを大切にすれば、
可能性は無限に広がると思います。

人生は一度きりです。

私はダイナミックに生きたいと考えています。
人生を楽しむことも、平凡で生きることもあなた次第です。

あなたは「自分にできるかな・・・」と、
不安に思っているかもしれません。

でも、怖がる必要はありません。

一人ではなく「チーム」として、
そして仲間として一緒に頑張りましょう!

一期一会の心さえ身に付けてしまえば、
どんな土地でも、どんな社会であっても生きていけると思います。

そしてなにより、人生がもっと楽しくなります。

あなたの将来が、素敵な人生になることを心から願っています。

そば打ち人
塙 和貴


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